チームの状態は、議事録には残らない場所に表れます。会議中に何を見ればチームの問題に気づけるのかを、「グループプロセスの諸要素」という観察の観点を紹介します。
【この記事の要点】
- 結論:チームの問題は議題(コンテント)ではなく、人と人との関係的過程(プロセス)に現れる
- ポイント①:プロセスは「意思決定の仕方」「発言の偏り」など観察可能な要素に分解できる
- ポイント②:見えやすいプロセスの奥には、情動や規範といったさらに見えにくい層がある(氷山モデル)
- ポイント③:次の会議で観察の観点を1つだけ決めて試す。気づいたことをその場で指摘しない
グループプロセスとは何か?
会議には、二つの層があります。Tグループなどのラボラトリー方式の体験学習では、これを「コンテント」と「プロセス」と呼び分けてきました。
コンテントとは:課題や仕事などの内容的側面。話されている事柄で、形に残りやすく比較的見える部分。
プロセスとは:人と人との関係的過程。雰囲気、感情、関係性の変化など、形として残すことが難しく見えにくい部分。(津村俊充ほか編『人間関係トレーニング 第2版』2005、ナカニシヤ出版)
「決めたはずのことが動かない」「発言がいつも同じ人に偏る」といったチームの問題は、ほぼ例外なくプロセスの側で起きています。会議では反対が出なかったのに、終わった後の廊下やSlackのDMで本音が交わされる。あの現象は、会議の中で扱われなかったプロセスが、別の場所に漏れ出したものだと見ることができます。
氷山にたとえるなら、水面上に見えているのがコンテント、水面下に広がっているのがプロセスです。水面下はさらに深く、コミュニケーションや意思決定の仕方といった比較的見えやすい層の下に、不安や対抗心といった情動の問題が、その底に規範や価値観の層が沈んでいます。表面の議題をいくら整理しても解決しない問題は、この下の層から生まれています。だからこそ、アジェンダの改善やツールの導入だけではチームが変わらないことがあるのです。
グループプロセスの、何を観察すればいいのか?
「プロセスを見ましょう」と言われても、それだけでは動けません。使いやすいのは、プロセスを観察可能な要素に分解した整理です。前掲書では、大きく二つの系統に分けて挙げられています。
課題の進め方にかかわる要素
- コミュニケーション:発言の仕方や偏り、聴き方
- 意思決定:暗黙の決定、多数決、合意など「決まり方」の型
- 目標の明確化:目標(最終、現時点)への共通理解があるか
- 時間管理:誰が、どのように行っているか
- 仕事の手順化:手順の共有、役割の分化と統合
どれも「今日の会議でどうだったか」を具体的に思い出せる項目です。
なかでも観察のしがいがあるのが意思決定です。チームの「決まり方」には型があります。リーダーの提案に誰も反応しないまま次の議題に進む「暗黙の決定」。自説への同意を隣の人に求め、その勢いのまま結論に持ち込む「自己権威化」。声の大きい数人で押し切る「少数派による決定」。そして多数決、話し合いによる合意。ここで注意したいのは、沈黙は合意ではないということです。反応がないまま「決まった」ことは、実行の段階で静かに崩れていきます。「決めたはずのことが翌週また議題に戻ってくる」現象の多くは、ここに原因があります。観察して見えてきた「決まり方」を、独裁型・多数決・委任・コンセンサス・コンセントといった方法として整理し、チームで事前に選んでおくやり方は、チームの意思決定方法の記事で詳しく紹介しています。
関係の維持にかかわる要素
- リーダーシップ:課題を前に進める働きと、参加を支える働きの両方
- 規範(ノーム):誰も口にしないが全員が従っている暗黙のルール
- 雰囲気:開放的か閉鎖的か、競争的か協働的か
- メンバーの様子:コミットメントの程度、不安、防衛
リーダーシップには二つの働きがあるとされます。意見を言い、まとめ、課題を前に進める働きと、発言を促し、気持ちの表出を助け、参加を支える働きです。観察のポイントは、これらを役職上のリーダーだけの仕事と見ないことです。会議のたびに口数の少ない人へ自然に話を振るメンバーがいれば、その人が関係維持の働きを担っています。逆に、誰もこの働きを担っていないチームでは、課題がどれだけ前に進んでも、参加の偏りが静かに固定されていきます。

グループプロセスの諸要素は、数値にこそならないものの、チームの関係性を観察可能にする定性的なメトリクスとして機能します。ダッシュボードには載らないけれど、確かに測れるものです。
明日の会議で、どう始めるか?
すべてを一度に見ようとすると、今度は会議の内容が頭に入らなくなります。おすすめは、1回の会議につき観察の観点を1つだけ決めることです。
- 誰がよく話し、誰の方を向いて話しているか
- 誰が誰の後に話すか。誰の発言がサポートされ、誰の発言が流されるか
- 何かが「決まった」瞬間、実際には何が起きたか。全員の合意か、沈黙か、声の大きい人の押し切りか
- 時間は誰が、どのように管理しているか
- このチームの暗黙のルールは何か

ここで注意したいのは、気づいたことをその場で指摘したくなる衝動です。「Aさんばかり話していますね」と本人たちの前で言えば、観察は告発に変わり、場は一気に防衛的になります。観察はまず、支える側である自分自身の見方を変えるために使う。働きかけはそのあとで十分です。
では、観察したものをどう活かすか。私たちが勧めるのは、断定ではなく問いに変換して、グループ自身に返すことです。「Bさんの意見が流されていた」と指摘する代わりに、「さっきの決め方、みんなはどう感じていますか」と問う。誰かを名指しで評価するのではなく、プロセスそのものをチーム共通の観察対象にする。プロセスに自分たちで気づいたチームは、外から指摘されたチームよりも速く、そして深く変わっていきます。
まとめ
チームの問題は、議題の中身ではなく、人と人との間で流れているプロセスに現れます。そしてプロセスは曖昧な雰囲気論ではなく、意思決定の仕方や発言の偏りといった観察可能な要素に分解できます。次の会議では、議題を追いかける自分とは別に、観点を1つだけ持った観察者を自分の中に置いてみてください。見える景色が変わるはずです。
なお、氷山のさらに深い層にある規範や価値観が組織の変化をどう阻むかは、シャインの「組織文化の3つのレベル」の記事で扱っています。あわせてどうぞ。
参考文献
- 津村俊充ほか編『人間関係トレーニング 第2版』ナカニシヤ出版、2005年
- 津村俊充『人間関係における「プロセス」を再考する』南山大学人間関係研究センター、2017年
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