ペアコーチングは、一見シンプルなアップグレードに思えます。コーチが2人なら、気づきも2倍!というように。でも私の経験では、ペアコーチングはコーチングの中でもかなり難しいやり方だと感じました。しっかりした事前準備と、こまめなすり合わせが欠かせません。それでも、うまくいけば、1人のコーチではできないことをクライアントに届けられます。この記事では、ペアコーチングがなぜ難しいのか、うまくいくポイントは何か、そしてなぜ挑戦する価値があるのかをまとめました。
ペアコーチングは思ったより難しい!
コーチにはそれぞれ自分の直感があります。いつ踏み込むか、いつ黙るか、どの話を深掘りする・しないか。1人でやるときは、良くも悪くも、その直感でセッションが自然に進んでいきます。でもコーチが2人いると、直感やスキルのレベルがぶつかる可能性が高いと考えています。
- 1人が問いを深めようとした瞬間に、もう1人が話をまとめに入ってしまう。
- 今クライアントに必要なのは沈黙なのか、言葉なのか、その場で意見が分かれる。
- クライアントが「自分に近い」と感じるコーチにばかり話すようになり、関係が2つに分かれてしまう。
ペアコーチングが難しいのは、善意だけでは2人の足並みがそろわないからです。「よし!頑張ろうね!」だけが不足です。2人で組むなら、クライアントに会う前にやっておくべき準備がたくさんあります。
事前に決めておくと役立つ問いは、たとえばこんな感じです。
- 役割。 1人がリードしてもう1人が観察するのか、交代でやるのか。リードはセッションごと、テーマごとに変わるのか。「メイン」と「サポート」に分けるのか。
- 意見が分かれたとき。 意見が違ったらどうするのか。クライアントの前でオープンにしていい違いと、2人だけで話すべき違いはどれか。
- 合図。 「ちょっとペースを落とそう」「この話を深掘りしたい」を、セッションの流れを止めずにどう伝え合うのか。
- クライアントとの合意。 2人体制のことをどう説明するのか。それぞれのコーチに何を期待していいのかを、どう伝えるのか。
この話し合いを飛ばすと、クライアントの目の前で、その場で調整することになりがちです。なので、最初のセッションよりずっと前に、せめて話し合いだけでも始めておくのがおすすめです。目指すのは、スタート地点を決めることですがコーチ同士の関係は、関わりが進むにつれて変わっていくものだと思っておきましょう。
私たちも、3人でワークショップを準備したときは、まずチームとしての合意(DTA)をつくるところから始めました。その様子はこちらの記事で紹介しています。
→ Scrum Fest Osaka 2026でワークショップを提供してみた
コーチ内での合意は続けていくもの
関わりが進むと、クライアントは変わっていきます。それぞれのコーチの見立ても変わります。最初は息が合っていた2人でも、数回のセッションのうちに、気づかないままズレていくことがあります。個人で感じた原因の一つは、スキルや経験の違いでした。経験豊富なコーチがつい会話を引っ張ってしまったり、経験の浅いコーチがクライアントに伝えるべき気づきを言い出せなかったり。だからこそ、定期的なすり合わせは、最初の合意と同じくらい大切です!
一番シンプルなのは、毎回のセッション後に短いディーブリーフをする習慣です。たとえば:
「それぞれ何に気づいた?」
「どこでお互いの邪魔をしてしまった?」
「クライアントに次に必要なものは?」
といったことを話します。セッション前にちょっとチェックインのもおすすめです。2人が同じ意図を持ってセッションに臨めます。

すり合わせには、お互いに正直になることも含まれます。どちらかが置いてきぼりだと感じていたり、クライアントの方向性について意見が分かれていたりすると、その緊張はいずれセッションの場に出てきます。早めにコーチ同士で言葉にしておけば、それがクライアントの問題になるのを防げます。
うまくいけば、本当にうまくいく!
息の合ったペアなら、クライアントに2倍、いやそれ以上の価値を届ける可能性が生まれます。
1人が会話をリードしている間、もう1人は観察に集中できます。表情や身振り、エネルギーの変化、クライアントが繰り返すパターン。会話を進めることで手いっぱいのコーチが見落としがちなことを、もう1人の目がキャッチしてくれます。
さらに、2人のコーチは2つの視点を持ち込みます。バックグラウンドもスタイルも違うので、クライアントは課題をいろんな角度から見られます。コーチ同士が違う意見をオープンに出せば、健全な意見の違いのお手本にもなります。それこそが、クライアントが学ぼうとしていることだったりします。
そして、ペアはお互いに責任を持ち合います。ふりかえりを通じて2人の考えが深まり、クライアントは違う視点からふりかえられたセッションを受けられます。
ペアコーチングはやる価値がある?
あります!
ですが思ったよりペアコーチングは楽な選択肢ではありません。1人でコーチングするより、準備も、対話も、謙虚な気持ちも多く必要です。
ペアコーチングを考えているコーチの方へ、私自身の成功と失敗から学んだアドバイスです。
- 事前準備にしっかり時間をかける。
- すり合わせの時間を確保する。
- 自分が正直に話せて、相手も正直に話してくれるパートナーを選ぶ。
- コーチ同士の関係も、コーチングが必要なものとして扱う。
最初にしっかり力を注げば、ペアコーチングはあなたのコーチングの中でも、とてもパワフルな手法の1つになるはずです。
ペアコーチングを含め、yamanecoのアジャイル・コーチングに興味がある方は、ぜひこちらをご覧ください。
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