ホラクラシーの世界に飛び込んで:新しい働き方との8ヶ月間

yamanecoに入社して私が変化したこと・学んだこと ・自分から意見を発信できるようになった ・組織運営の当事者意識が芽生えた ・テンション(理想と現実のギャップ)を感じ、表現できるようになった
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ホラクラシーの世界に飛び込んで:新しい働き方との8ヶ月間
Photo by Jukan Tateisi / Unsplash

はじめに

yamanecoは、ホラクラシーを採用している会社です。入社してからこの8ヶ月で大きく3つのことについて学びを得ました。

  • 自分から意見を発信できるようになった
  • 組織運営の当事者意識が芽生えた
  • テンション(理想と現実のギャップ)を感じ、表現できるようになった

入社前は「組織のあり方が違うんだな」という程度の理解しかなく、6人程度の小さな会社で全員が会社について考えていくという形に対して、期待と不安が入り混じっていました。入社前から「ホラクラシー面白いんだよ」といった話は聞いていたものの、実際にどのような組織なのかはほとんど想像がつきませんでした。

ホラクラシーとは簡単に言うと、「理想と現実の間のひずみ(テンション)」を大切にし、権限を分散させた自律的な組織運営の方法です。従来の上下関係を重視した組織とは異なり、各メンバーが役割(ロール)を持ち、それぞれの領域で自律的に意思決定を行います。ロールには「Purpose」「Accountability」「Domain」が定義され、その領域に関しては上司の許可を得ることなく意思決定できるという特徴があります。

この記事では、ホラクラシー組織に入って最初の8ヶ月間で、私自身がどのように適応し、成長してきたか、そして組織への関わり方がどう変化したかをお伝えします。

1週間目:わからないことだらけの始まり

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Photo by Gia Oris / Unsplash

入社して最初の1週間は、ホラクラシーの基礎がまだわからず、help-meチャンネル(社内のSlackで助けが必要なときに呼びかけるチャンネル)で頻繁に質問をしていました。他のメンバーの状況や組織の状況も見えておらず、急ぎ足で回答を求めるような状態だったかもしれません。しかし、メンバーが親切に応えてくれたことで安心感を得られました。

この頃は「ホラクラシーって何?」という状態で、用語や基本的な仕組み、例えば「テンション」「ロール」「ガバナンス」といった概念を理解するのに精一杯でした。ホラクラシーは単なる組織構造ではなく、独自の考え方やプロセスを持つ複雑なシステムであり、その全体像を把握するには時間が必要でした。

1ヶ月目:学ぶことの連続

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Photo by Towfiqu barbhuiya / Unsplash

会社には定期的にホラクラシーに関するQAセッションの時間があり、わからない部分を質問できる貴重な機会でした。特に「テンション」という概念について、そもそもどういったものなのかがわからなかったので、そのあたりを中心に質問しました。

テンションとは「今の現実」と「ありたい理想の状態」とのギャップを感じたときに生まれるもので、ホラクラシーではこのテンションを重要な資源として扱います。ホラクラシーの理念では、個人が感じるテンションは組織を進化させるための大切な情報源であり、それを適切に処理することで組織が成長していくと考えられています。

この時期はアジャイルやエンジニア関連のイベントにも参加し、外部からの刺激を受けることで視野を広げる機会も得られました。しかし、まだ組織に対して距離を感じており、自分の立ち位置を模索しながら学ぶので精一杯な状態でした。

3ヶ月目:少しずつ動き始める

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Photo by Aaron Burden / Unsplash

3ヶ月目になると、いくつかのロールに入って活動するようになりました。自身のプロジェクトも持ち、それを実行に移すための行動を意識し始めました。これはホラクラシー組織に参加している実感を得る上で非常に重要な転機でした。

ホラクラシーでは、各ロールが「Next-Actions(すぐに取れる次のアクション)」と「Projects(達成したい成果)」を定義する責任があります。具体的には、ロールの目的や責務を達成するために、「次に何をすべきか」「どのような成果を目指すか」を自ら考え、行動に移すというプロセスです。

この頃から少しずつ、組織の一員として自分のロールを通じて貢献するという意識が芽生え始めました。ロールを通じて組織に関わるという感覚は、従来の組織では経験できなかった新しい感覚でした。

ただ、まだ完全に能動的に動ける状態ではなく、テンションについても「何が必要なのか」がわからない状態での発言が多かったです。例えば、「何かがしっくりこない」と感じても、それが具体的に何なのか、どう改善すべきなのかを明確に言語化することが難しかったのです。それでも、周りのサポートがあったおかげで、徐々に自分の思いを表現する力が養われていきました。

6〜8ヶ月目:組織の全体像が見え始める

この頃になると、現状に対しての「テンション」が以前より上手く出せるようになりました。組織全体や向いている方向が見えるようになったことで、それに対してのテンションも感じやすくなったと思います。組織のビジョンや目標が自分の中で明確になってきたことで、「こうあるべき」という理想と「今の現実」とのギャップをより敏感に感じ取れるようになったのです。

3ヶ月に1度、全員が集まって会社の目指す姿などを共有する機会があるのですが、最初の頃は「へー」という感覚でただ聞いているだけでした。質問があるかを求められても、今までの組織では会社の方向性をただ受け入れる姿勢だったため、自分から質問することすら思いつきませんでした。

しかし6〜8ヶ月経つと、「今この会社は何を求めていて、どこに向かいたいと思っているのか」を意識するようになり、「こういう方向にも進みたい」といった意見も自分から出せるようになりました。これは私にとって大きな変化でした。

この変化こそが、ホラクラシー組織に本当の意味で参加できているという実感につながりました。単なる業務の遂行者ではなく、組織の方向性を共に考え、形作る一員になれたという感覚です。ありたい理想の姿が見えてきたことで、現実とのギャップをより明確に感じ取れるようになり、それをテンションとして表現する力も身についてきました。

私が変化した点:組織への意識の変革

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Photo by Bruno Nascimento / Unsplash

ホラクラシー組織に入って一番変わったのは、組織運営の当事者になれたと感じていることです。

  1. 意思決定への積極的な参加と自身の意見の発信
    以前働いていた企業では、会社がどのような方向に向かいたいのかを特に意識せず、「会社がそう思っているんだな」と聞き流していました。しかしホラクラシーでは、自分のロールの領域において自律的に決断できるようになりました。例えば、プロジェクトの進め方や優先順位を自分自身で決められるようになったことで、より大きな責任感とともに仕事への満足度も高まりました。
  2. 組織全体への視野の広がりと当事者意識
    単に自分の仕事だけを見るのではなく、組織全体の方向性や目標を意識するようになりました。3ヶ月に一度の全体会議で「へー」と聞き流すだけだった状態から、「この方向性についてはこう思う」と意見を言えるまでに成長できたと思います。自分の意見が組織の進む道に影響を与えられるという実感は、非常に大きな変化です。
  3. テンションを資源として活用する力
    最初は「何かがしっくりこない」という感覚を表現するのも難しかったのですが、徐々にテンションを感じ取り、それを建設的な提案に変換する力が身についてきました。この能力は、単に仕事をこなすだけでなく、組織をより良くするための貢献ができるという喜びにつながっています。

これらの変化は、単に仕事の進め方が変わっただけではなく、私自身の組織への関わり方そのものを変えました。用意されたレールに乗るだけだった状態から、レールを自分たちで作り、常に改善していくという姿勢への転換です。この変化が私にとって最も価値のある経験でした。

まとめ:ホラクラシーで私が学んだこと

入社してからの8ヶ月間は、私の働き方と組織への関わり方を根本から変えてくれました。受け身だった状態から、組織運営の当事者として主体的に参加できるようになったことは、想像以上に大きな変化でした。

現在も学習途中であり、テンションをより効果的な提案に変換するスキルや、複数のロールを担う中でのバランス調整など、継続的に向上させたい領域があります。しかし、これらの挑戦自体が成長の機会であり、ホラクラシー組織ならではの醍醐味だと感じています。

自分の意見が尊重され、組織づくりに直接参加できる環境は、従来の組織では経験できない貴重なものです。これからも学び続け、より良い組織づくりに貢献していきたいと思います。

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