9月、私たちJBとRyoはフランスで開催された「Agile Tour Sofia Antipolis 2025」(ニースの近く)に参加し、「アジャイル・レストラン・ワークショップ」を実施してきました。
普段は日本各地で行っている人気ワークですが、海外版は今回が初。
異文化の中でどう受け止められるのか、私たち自身にも大きなチャレンジでした。

テーマが「料理」なら、やるしかない
JB: 今年のテーマが「料理」と聞いたとき、もう迷いはありませんでした。
「アジャイル・レストランやるしかない!」
そこでITpreneurs Japanの最上さんに頭を下げて、「ぜひこのワークショップやらせてください!」とお願いしました。元々は我々のワークショップではなく、ITpreneurs Japanが独自で作ったワークショップなんですけども、何とか許しをもらって、フランスに挑んできたわけです。
正直言うと、そんなに違わなかった
Ryo: 結論から言うと,日本とめちゃくちゃ違うぞ!とか、いかにもフランス人だな!みたいな感じは、言う程はなかったんですよね。みんな明るく乗っかってくれたし、興味深く見てくれました。
驚きとしては、「そんなに言うほど違いがないな」っていうのが一つの驚きでした。楽しいワークショップデザインは、国境を超えるなと思いました。
でも、ここはめっちゃフランスだった
Ryo: 日本とフランスの文化的な違いは、「困ったお客さん」の役割をどう演じるかに現れました。
日本だと、困ったお客さんは大体こんな感じです。まず席に座って、それから注文の仕方が荒いとか、「早く来て、早く来てよ」とか、そういう感じ。席に座ってから、ちょっとあえてやっちゃえやっちゃえみたいな。
でもフランスは違った。
そもそも席に座らない。
ずっと喋って、世間話して、喋って喋って喋って、注文1個も取らせないっていうやばいお客もいました。
JB: 「確かにめっちゃフランス人だね、そこは!」って思いましたね。
飼い犬連れてきた事件
Ryo: もう一つ印象的だったのが、レストランのお客役できたお客さんがスーツケースを持って、旅行中の2人なのかな?みたいな雰囲気で見てたんですけど、JBが床に落ちていた水(ワークショップで使う紙製)を拾ってあげようとしたら怒られて。
JB: なんか床に落ちてたんだよね。それ、犬に水をあげてるところだったんだよ。
Ryo: 家で犬飼ってる人なら普通なのかもしれないけど、日本のワークショップではほぼ見ない光景。そして「私の犬のなんだから触らないで!」って、逆にファシリテーターが怒られるっていう面白い場面がありました (笑)。
凝縮版:フランスでやるにあたって工夫したこと
JB: 今回は110分という時間制約があったので、結構頑張って凝縮版にしました。スプリント1、2、3を何とか走って、レクチャー時間はほぼなしという形です。
メニューから削ったもの:
- おしぼり:これはそもそもフランスでは出してないものですね。
調整したもの:
- 水の提供:フランスのレストランは基本、水言わないと出てこないから、「なかったら頼んでください」っていう指示にしました。
- 料理:最上さんがめちゃめちゃフランス料理とかカスタマイズしてくれて、バゲット出したりとか。それはめちゃめちゃ助かりました!
日本のワークショップだっていうふうに言ってたから、その辺の気構えは向こうもあったんですよね。だから日本っぽいものが出てもあまり驚きはなかったんだろうな。寿司とか入れてもよかったかもしれませんね。
場所の設計でちょっといじわる
JB: 結構広めの部屋だったから、椅子と机が余分に余ってて。それで、客席とキッチンの間にカオスのように置いて、みんなスムーズに歩けないような、そんなちょっといじわるな設計もしてました。
「どうみんな動くのかな?」って興味で見てたんですけど、結構援用してたんだよね。「なんか触っちゃいけないのかな」とか思ってたりして。最終的には動かしたんだけど。
その辺も別に日本でも同じこと起きるかな、きっと。
期待してた「ウィ、ムッシュ!」は出なかった
JB: 皆さん、キムタクが出演する日本のドラマ『グランメゾン東京』は知ってます?あの「ウィ、ムッシュ!」っていう決めゼリフあるじゃないですか。
あれがね、でないのよ
Ryo: フランスに行ったら絶対出るよねって期待してたんだけど、あれは出ません。むしろ普通に言うかもしれないけど、そんなキメキメのセリフのように出すかって言われると、そうじゃないんだよね。
アクションカードで「まじか!」
Ryo: ワークショップには『アクションカード』っていうのがあって、急に突飛もない注文をするんですよ。「誕生日祝ってくれ」とか、「急にWi-Fi繋げないの?」とか。
カードを出したときの反応が、結構強烈に「マジか!」みたいなのは出してた気がしてて、「そういうことしちゃいけないよな」っていう感覚があったのかな。
JB: でもね、それというよりかは、元々カオスでその上でまた何かやるみたいな感じもあったけど。だって結構ガチでやってて、結構楽しくやってたから。驚きはあったけど、「それはそれでいいだろう」みたいな、なんかそんな感じでした。
学びの時間が、実はすごく深かった
JB: やっぱりレクチャー時間がなくても、皆さん最後に輪というか車座っていう形を作って座っていただいて、「このワークショップを通じて何を学んだか」を話し合ったんですけど。
私としてはあれはあれだけでも、その体験だけでもめちゃめちゃいい学びが入るんだなって思いました。
ただ、正直な告白をすると...
Ryo: 「全部フランス語で喋ってたじゃない」
JB: 「その通りだ」
Ryo: だから実は、自分は具体的な内容はあんまりわからなかったんですよね(笑)。空気感はいいなと思ったし、オーガナイザーの人たちも来てて、ちょっと時間オーバーしてたから「ごめんね」って言ったら、「いい話できてるから」みたいなこと言ってたから、何となくは雰囲気はわかるけど。
「ごめん、実は僕ね、フランス語わかんないよ」
でも不思議なもんで、ちょっと伝わってくるものがあるんですよね。
JB: 私にとって特に印象的だったのは、自分たちの余裕と顧客のわがままの折り合いというか。
私たちが良いサービスを提供したい。と同時に、お客さんの言いなりになってしまうと壊れてしまう。
まさに今回のワークショップで体験したわけですよね。そこを私たちはちゃんと「ノー」と言えるようにとか、「ちょっとそこはちょっと一線越えてるよね」っていう話も、やっぱちょっとどっかで私たちは勇気を持って出さなきゃダメなんだよね。
そんな学びが、私にとっては結構すごく深いなっていう感じでした。
「いい話をよく聞けたよ」って思って。

最後に
ワークショップを文化を超えて実施するのって、謙虚さと柔軟性が必要だなって思いました。そして何より、参加者が体験から意味を引き出す力を信じること。
アジャイルレストランワークショップは、フランスらしさを受け入れながらも、核となる学びはしっかり伝わる。そんな強さを持っていました。
次回何か変えるとしたら?もっとメニューにフランス的な要素を追加するかもしれません。あと、「ウィ、シェフ!」は期待しないように参加者に伝えるかも(笑)。
でも全体として、アジャイルの原則って、美味しい食べ物のように、普遍的な魅力を持ってるんだなって。たとえすべての文化が独自の味付けを加えたとしても。
アジャイル・レストランワークショップは、レストラン運営をシミュレートして、実践的にアジャイルの原則を学ぶワークショップです。キッチンスタッフ、サーバー、顧客の役割を担い、反復的な提供、顧客との協力、変化への対応を体験します。
