私たちは普段、問題を考えるときに、「リスクばかり気になる人」や「アイデアばかり出す人」など、それぞれの“思考のクセ”に偏りがちです。6つの帽子思考法は、6つの異なる“思考の帽子”をかぶることで、意識的に視点を切り替えながら、問題の本質をより多面的に捉えて、より円滑に解決へと導き出せます。
6つの帽子思考法とは
6つの帽子思考法は、1985年にエドワード・デボノが発表した思考整理のフレームワークです。6色の帽子を「かぶり分ける」ことで、意識的に視点を切り替え、より豊かな議論や意思決定を可能にします。シンプルなルールでありながら、世界中の企業やチームで活用されています。






「言いにくいことも言いやすくなる、魔法の帽子だと思います。」 − 6つの帽子思考法ワークショップの参加者の声
- ⚪️ 白い帽子(White Hat)は事実とデータに焦点を当てます。「何がわかっているか?」「どんな情報が必要か?」を問う、客観的な思考モードです。
- 🔴 赤い帽子(Red Hat)は感情と直感を扱います。論理的な根拠がなくても「なんとなく違和感がある」「ワクワクする」といった感覚を表現することが許されます。
- ⚫️ 黒い帽子(Black Hat)はリスクと問題点を洗い出します。批判的思考であり、「何がうまくいかない可能性があるか?」を検討します。
- 🟡 黄色い帽子(Yellow Hat)は価値とメリットに注目します。楽観的な視点から「なぜこれがうまくいくのか?」を探ります。
- 🟢 緑の帽子(Green Hat)は創造性と新しいアイデアを生み出します。既存の枠にとらわれず、「他にどんな可能性があるか?」を問います。
- 🔵 青い帽子(Blue Hat)はプロセス全体を管理します。メタ的な視点から「今どの帽子を使うべきか?」「議論は目的に向かっているか?」を俯瞰します。
チームでの活用
チームでこのメソッドを使う最大の利点は、「人」と「意見」を切り離せることです。
たとえばプロジェクトの課題を検討する際、全員で順番に各帽子をかぶります。最初に白い帽子で事実を共有し、次に緑の帽子でアイデアを出し、黄色い帽子でメリットを探り、黒い帽子でリスクを検討します。こうすることで、「〇〇さんはいつも否定的だ」という対立が「今は黒い帽子の時間だから、全員でリスクを考えよう」という協働に変わります。
発散(アイデア出し)と収束(意思決定)のフェーズを意識的に分けることで、議論の質が格段に上がります。
ファシリテーターは常に青い帽子をかぶり、全体のプロセスを見守りながら、帽子の指定と切り替えのタイミングを決めていきます。

個人での活用
自分自身の「思考のクセ」に気づくきっかけにもなります。
たとえば、何かを検討するときに各帽子を順番にかぶってみてください。すると、ある帽子はスムーズに使えるのに、別の帽子では言葉が出てこない、という経験をするかもしれません。黒い帽子(リスク思考)は得意だけれど、緑の帽子(創造的思考)になると急に手が止まる。あるいは、赤い帽子(感情)を意識的に使うことに抵抗を感じる。
こうした発見は、自分のデフォルトの思考パターンを知る第一歩です。そして、自分のクセを認識できれば、状況に応じて意識的に違う帽子を選ぶ力が育っていきます。
またはAI活用という観点で、仕事やプライベートでの対話を録音してみて、AIに分析させて、自分にどんな帽子をかぶりがちなのか、どんな帽子をかぶらないかに気づくことができます。それを受けて、次はこの色をもっと意識してみようという行動につなげてみてはいかがでしょうか?
この手法をより深く理解したい方には、エドワード・デボノの著書『Six Thinking Hats』をおすすめします。日本語訳『6つの帽子思考法』(川本英明訳)も出版されています。
6つの帽子思考法でのファシリテーションを検討される方、Miroボードのテンプレートがありますのでぜひ活用してみてください。
また、ファシリテーターとして以下のポイントをおさえておくとより効果的になります。
- このワークの意図をしっかり伝えること、人に思考のクセがあることを受け入れたうで、ロールプレイのような気軽さで参加できるように場を整えてください
- それぞれの帽子の持つ意味と役割をきちんと説明してください。たとえば、黄色い帽子と赤い帽子、赤い帽子と黒い帽子、質感が少し重なっているように感じることがありますので、区切りをしっかり伝えてください。
- 心理的な安全性を確保してください。特に赤い帽子では普段受け入れられないような声が出ることもありますが、そういう声こそが大事ですので、「個人」と「帽子の声」が切り離される場づくりをしてください。
- 対面で集まるなら、物理的な帽子を用意しておくと更にパワフルなワークになります。