スクラムにおけるアウトプット思考とは以下と定義します。
- チームの稼働率を100%以上の状態にしてスプリントを計画し続けること
- 個々の計画した仕事に対して「できたかどうか」、「どのくらいできたか」、「本当ににできたのか」の観点でレビューを行うこと
この状態が闇であって、チームとビジネスの破綻へと導きます。
このような思考は短期的な結果(アウトプットが増える)が出るので続けたくなる現場やマネージャが多いですが、ゾンビスクラム(パーパスレスで仕事に対する意欲がなく、問題を直視しない)になっていくだけではなくチームメンバーの健康に危害を及ぼすのですぐに止めるべきです。
スクラムはアウトカム思考で実践するためのフレームワーク
スクラムはアウトプットを追い続けるよりもアウトカムを重視するフレームワークです。2020年版のスクラムガイドではそれを更に強調しています。
- プロダクトオーナーはプロダクトゴールを策定し、明⽰的に伝える
- スクラムチームはスプリントになぜ価値があるかをステークホルダーに伝えるスプリントゴールを定義する(2020年版に追加)
以下、アウトカム思考に慣れるためのスプリントプランニングの極端的なアプローチを推奨します。
- 1.まず、未来のスプリントレビューを想像し、どんな成果が残ってよかったかを明確にすし、それを基に1つのスプリントゴールを定義する
- 2.そのレビューで得られた成果(あるいは確認できた成果)に繋がる仕事(プロダクトバックログアイテム)を洗い出す。プロダクトバックログの既存のものに限定する必要はない。むしろゴールに直結するものはないのなら、新たに作りましょう
- 3.ゴールを達成するための仕事がキャパシティ内に収まって、さらに余裕が十分(過去のトレンドから見極めよう)に残っているのなら、そのまま一旦止める。そうでないのなら、ゴールを見直す(ステップ1に戻る)。
- 4.それ以外の仕事は計画しない。例外として、改善のバックログアイテムとラーニングの時間を挙げます。
上記のアプローチで2つの悩みを抱くかもしれません。
- キャパシティの半分くらいの仕事しかしていないのはお金の無駄です!
=> 製造ラインを100%稼働させると故障し、逆に生産性が落ちてお金の無駄になります。スクラムチームも同様です、生産性を高めたいのなら余白が必要です。
- 1週間スプリントですが、これじゃ2日間で終わるのではないか?
=> 2日間で終わったのならそれはそれで良いです。ゴール達成してから次のゴールを考えるか、追加の仕事に取り込むか、改善や学びなどに投資をするか、選択がたくさん残っている分、問題ありません。
それでも、このやり方に慣れないままゴールに関係ない仕事を計画したいと思うなら、私はこう答えます:走りたいなら、まず歩き方を覚えなさい。