この記事でお伝えしたいのは、Holacracyに参加する前の私に渡したかった4つのTipsです。Holacracy組織での経験を積んできた中で、「これ最初に知っておきたかった!」と感じたポイントがいくつかあります。
「Holacracyって聞いたことあるけど、実際どうなの?」と思っている方、これからHolacracy組織に参加される方、特にGovernance MeetingやTactical Meetingに初めて参加される方に向けて、実体験から得たTipsをお伝えします。
1. Facilitatorは「合意形成の支援者」ではない
私がしてしまった勘違い
一般的に「ファシリテーター」と聞くと、以下のような役割を期待してしまいがちです:
- みんなが納得できる結論に導いてくれる人
- 出された意見をまとめて、可視化してくれる人
- 場の雰囲気を読んで、良い方向に導いてくれる人
HolacracyでのFacilitatorの実際の役割
しかし、HolacracyにおけるFacilitatorの役割は根本的に異なります。彼らはHolacracy Constitutionに則ったプロセスを厳格に実行することが主な責任です。
- プロセスの管理者として、決められた手順を遵守させる
- 感情的な議論や脱線を許さず、構造化された進行を維持する
- 「今はそのフェーズではない」と制止する権限を持つ
- Objectionの有効性をプロセスに則って判定する
Objectionとは、Governance変更の提案に対して参加者が自身のRoleに関する懸念やマイナスの影響を指摘し、提案の変更や取り消しを求めることです。Facilitatorは、このObjectionが憲法で定められた基準を満たしているかを判定する役割を担います。
Holacracyに参加する前の私に伝えたいこと
Holacracyでは、個人の主観や感情に左右されない構造化された意思決定を大切にしています。なので最初は「議論ができない」と感じるかもしれませんが、この違和感は自然な反応です。従来の会議に慣れた人なら誰もが感じることなので、心配しなくて大丈夫です。
2. Secretaryは「軽い役割」ではない
私がしてしまった勘違い
「Facilitatorは大変そうだから、まずはSecretaryから始めよう」と考える人は多いです。一般的にSecretaryには以下のようなイメージがあります:
- 議事録を作成する事務的な役割
- 会議の準備や連絡を行う補助的な立場
- 意思決定には関与しない、サポート役
私自身、Holacracy導入直後にFacilitatorに自信がなかったため、「まずはSecretaryから」と立候補しました。ところが、Governance Meeting中に参加者の意見が分かれてしまい、その場でHolacracy Constitution解釈の最終判断を求められて緊張した経験があります。
HolacracyでのSecretaryの実際の権限と責任
しかし、HolacracyのSecretaryは非常に重要な権限を持っています:
- Meeting開催権限:定期的な会議をスケジュールし、開催する責任
- Holacracy Constitution解釈権限:意見が分かれた時に、Holacracy Constitutionの解釈について最終的な判断を下す権限
Holacracyに参加する前の私に伝えたいこと
Secretaryを「軽い役割」だと思わず、Holacracy Constitutionの解釈を求められることがある、ということを心の準備しておきましょう。
ただし、Secretaryは「まずはHolacracyを体験してみる」のには良い役割でもあります。Facilitatorがプロセスを案内してくれるので、誘導してもらいながらHolacracyのミーティングを学ぶことができます。それと同時に、参加したばかりでもSecretaryとして記録を取ることでミーティングに貢献することもできます。
重要な権限を持つ役割だということを理解した上で、最初の一歩として挑戦してみましょう。
3. まずは「プロセスを信頼する」ことから始める
体験した違和感
HolacracyのMeetingに参加すると、以下のような不安を実際に感じました:
- 個々人のTensionに集中するため、全体像が見えない
- 「みんなで議論すればもっと良いアイデアが出るのに、このままで本当に良い決定ができるのか?」という不完全感
Holacracyでのプロセスの価値
最初は制約に感じる厳格なプロセスですが、経験を積むことで以下のことが分かってきます:
- プロセス自体が合理的な合意形成を生み出している
- 個人の感情や政治的配慮が排除され、公平性が担保されている
- 声の大きい人や権力者に左右されない決定ができている
Holacracyに参加する前の私に伝えたいこと
最初は「これで大丈夫?」と不安になるかもしれませんが、まずはプロセスを信じてやってみましょう。経験を積むことで、その合理性と公平性を実感できるようになります。従来の会議でありがちだった問題(声の大きい人主導、感情的な議論、政治的な駆け引き)がいかに多かったかも見えてきます。
4. 他人のTensionを代弁しない
私がしてしまった勘違い
従来の会議では、以下のような発言が「親切心」や「チーム思い」として評価されがちです:
- 「チーム全体として感じているのは...」
- 「みんなが困っているのは...」
- 「○○さんの代わりに提案しますが...」
Holacracyでの責任範囲の考え方
Holacracyでは各人が自分のRoleの範囲内でのみTensionを感じ、提案・反論することが求められます。
私が実際に体験したのは、Governance変更の提案に対してObjectionを出した際、自分のRoleの範囲を越えるモヤモヤは無効な反論とされたことです。他人が困るだろう、チーム全体に影響するだろう、という推測は自分のRole外の問題として扱われました。
しかし、Tensionを感じたら、そのRoleに参加すればよいのです。関係のない立場からの「善意の無責任」ではなく、自分ごととしてTensionを出し、実際の改善に取り組む習慣が身につきます。
これにより:
- 無責任な批判が排除される
- 当事者意識が醸成される
- 「文句を言うなら自分でやる」という健全な文化が生まれる
Holacracyに参加する前の私に伝えたいこと
従来の組織文化では「みんなのことを考えて発言する」ことが良いとされますが、Holacracyでは「自分のRoleの範囲」でテンションを発信することが求められます。これは考え方の大きな転換ですが、より建設的で責任ある組織運営につながります。
まとめ
これら4つのTipsは、私自身が実際に体験して「事前に知っていれば」と思ったポイントです。Holacracyは従来の組織運営とは根本的に異なるアプローチを取るため、最初は戸惑うことも多いでしょう。しかし、これらのポイントを頭に入れて参加することで、より早くHolacracyの価値を理解し、効果的に貢献できるようになると思います。
何より大切なのは、プロセスを信頼し、自分のRoleの範囲で責任を持って参加することです。きっと、従来では実現できなかった公平で合理的な組織運営を体験できるはずです。

